兎に書く

現役ライターたちによるノンジャンルブログ

シナリオを書く仕事を考える 第1回「まずは自分を考える」

そもそもの話から始めたい。私は現在、何故シナリオライターとして物語を書いているのか?

 

基本的に、当時としてはどこにでもいる子供だったと思う。ジャンプ作品をむさぼり読み、ゲームの勝ち負けで友達とマジ喧嘩し、ビックリマンシールを躍起になって集め、隙あらばテレビの前に座っていた。

 

明確な最初の岐路は、中学で演劇部に入ったことだ。ここで芝居を作っていく過程を体験し、その面白さにしっかりとハマってしまった。同時にバンドブームの洗礼を浴びる中でギターにも手を出し、芝居と音楽の両面で「作ったり体現したりする楽しさ」に目覚めた。

 

高校に入り、やはり演劇部に入部した。同時に、兼部が認められていた高校だったので、軽音楽部に入って人生で初めてのバンドを結成し、映画研究会などにも籍を置き、果ては大学も演劇学科に入学し、次第にバンド活動がメインになり、やがてはバンドマンのまま卒業。結果、バンドが解散すると、次はライターへの道が開けたのでそのまま進み、なんやかんやあっての現在というわけだ。

 

そもそも、エンターテインメントコンテンツに対して、あるいはエンターテインメントすることに対して強い興味を持っていたのだとは思う。それを生み出し、表現する方法を、まず最初に演劇から、そして、やがていくつかのジャンルからも学んだ。

 

基本的には、その場その場で楽しそうなこと、面白そうなことに飛びついていった。私は根っこで成り行き任せなところがあり、この歳まで生活できていることは本当に運が良いと思うことしきりなのだが、ともかく美味しそうな匂いがしたらすぐに手を出していた(結果、しこたま腹も下してきた)。ただ、取り組むことが変わる中で、「自分は何がやりたいのか?」という問いかけは常にあった。

 

その問いかけに対して、ある時期に、自分なりの結論を出すことができた。しょうもない悟りで恐縮なのだが、とどのつまり、私は「自分のカラーがある世界を作ることが好き」なのだ。色の濃淡はあるにせよ、とにかく自分を構成する何かしらの要素が作用している、何かしらの代物を作ることが楽しくて仕方がないのだ。もちろん、仕事ともなれば関わっている人たちが納得できるための協調や、できるだけ世の多くの人に受け入れられるための努力も自分なりにはしているつもりだ。しかしながら、根源的なところでは、身も蓋もない言い方をすれば、自己実現、自己満足といった類の、実にどうしようもない原動力で動いている。ただ、このような「欲」は、今のところ生きていく上ではどうしようもない要素にもなっている。

 

そして、これは私に限った話ではないはずだ。世の中にある多くのコンテンツには、間違いなく作り手の“何か”が潜んでいる。先述の通り、濃淡があるにせよ、だ。

 

そもそも、人は何かを遺したがる。日記やら銅像やら伝統やら子供やら何やらかんやら、様々遺す。自分の想いを込めまくって。人類とはそういう性なのだろう。

 

で、この「自分が出る」ということに対して意識的になることが、何かを作る上での“寄る辺”となる。とりわけ“物語”を作る上では。ここを踏まえた上で、次回は「キャラクター」について。

 

<書いた人>

結城昌弘 / 1976年生まれのライター。フリーランスを経て、ゲーム業界へ。「ヒーローバンク」シリーズや「ロリポップチェーンソー」などの開発に参加。現在は主にシナリオ執筆・監修業務に従事。